サイクロンと集塵装置の製作(2013年5月完成)

 ブロアのモーターは3相1馬力ですが風量が30立方米/分となっていたので少し大型のサイクロンを作ることにしました。右の写真は配管も済んだサイクロンの完成写真です。4月中旬に作り始め、5月下旬までかかりました。

ブロア

 中古で購入したブロアです。モーターは3相1馬力。ファンはシロッコ式です。名盤には最大排気量30立方米/分、最大圧力90mmAgと書いてありました。今まで使用していたマキタ410は最大排気量8立方米/分程度なのでこれに比較するとだいぶ強力です。最大圧力90mmAgというのが自分にはよくわからない。単位は水柱90ミリということらしいがこれが大きいのか小さいのかよくわからない。何となく小さいかなという気はする。だから配管を工夫して出来るだけ圧力の損失を少なくしないといけないらしいです。 特にダクトを太くすることが有効らしい。

インバーター

 我が工房には3相200Vの電源はありません。ですからインバーターが必要です。木工旋盤は100V入力のインバーターを使って3相モーターを回しています。このインバーターを切り替えスイッチを使ってブロアの電源とすることも出来ますが、この方式では旋盤を使う時に集塵が出来ない。ということで新たにインバーターを購入しなければなりません。ブロアが中古ですからインバーターも中古でいいのですが、100Vまたは単相200V入力のインバーターは中古ではあまり出ないし、出品されても値段が高くなる。3相200V入力なら安い。3相200V入力のインバーターは単相200Vでも動作するらしい。ただし単相200V入力では1馬力モーターを回すのに、3相入力で2馬力のモーターを回せる程度のインバーターが必要らしい。そして出来れば未使用品が良い。この辺の知識は全部テックさんに教えて頂きました。そしてオークションで見つけました。三菱製の未使用品で出力は十分で値段も安いものが出品されていました。(右上写真)FR-K3-2.2KM という機種で大変古い代物です。大きくて重いです。20数年前に生産終了したもので、取扱説明書も付いていません。しかしインターネットで調べると取扱説明書をダウンロードすることが出来ましたので、このインバーターを落札しました。

 

サイクロンの設計

 ブロア、インバーターが揃ったのでいよいよサイクロンと集塵装置の設計です。しかし自分は今まで家庭用掃除機を使った小型のサイクロンを作った経験はありますが大型のものは作ったことがありません。そこでもう余計なことは考えず、テックさんが使っているサイクロンのデータを頂きそっくり真似することに決めました。テックさんに連絡すると快くデータを教えてくれました。シリンダー、内筒、コーン部分の大きさ、それからダクトの太さなどです。ダクトはスパイラル管を使用しているようです。テックさんのサイクロンはシースルーになっているそうです。つまりプラスティック製です。

 

 テックさんのデータをもとに左の図面のように作ることにしました。シリンダーの径350ミリ、長さ385ミリ、内筒部分の径160ミリ、長さ330ミリ、コーン部分の長さ560ミリ、インレットの断面90×180、メインダクトは径150ミリのスパイラルダクトを使用。

 サイクロン本体は0.4ミリ厚の亜鉛びき鉄板(トタン板)を板金加工、はんだ付けします。下部ゴミ受けはHCで丸型ペール缶(45L)を購入。

内筒とブロア接続管の作成

 内筒はトタン板をΦ160長さ400ミリの円筒形に作るだけで簡単。ブロアの吸入口は径180ミリあるので、ここは旋盤を使い木製の接続管を作ることにしました。樺桜材を寄木式にリング状に接着し(右の写真)、旋盤で削りました(下の写真上段1枚目)。内筒はトタン板を長方形に切り、長方形の相対する2辺を10ミリの幅で折り、これを差し込みはんだづけします。10ミリ幅に折る時は先ずトタン板を鉄のLアングル(木の柱の角に固定してある)の上に、10ミリせり出して置き、上に角材などを乗せ、クランプで止めます(下の写真上段3枚目)。次に手の平で折り代を下に折り曲げます。そして堅い角材を折り代部分に当てハンマーでたたくとトタン板はほぼ90度に曲がります。次にクランプを外し、トタン板をテーブルの上に置き、折り代に両手の親指を押しあて45度くらいまで曲げます。折り代は長いですから端から曲げ始め、徐々に移動します。次に折り代部分に角材を当てハンマーでたたき更に曲げます。あまり曲げすぎると差し込めなくなるので注意。今度は円柱などの上に乗せトタン板を丸めます。ある程度丸くなったら折り代部分を互いに差し込み、かまぼこ型の板(下段1枚目)の上で折り代を角材とハンマーでつぶします。下段2枚目ははんだ付けが終わった状態です。はんだ付けが綺麗に出来ていません。はんだ付けにについてはこの後書きます。下段3枚目の写真は内筒を接続管に差したところです。実際に取りつける時は写真とは上下逆にします。 

はんだ付けについて

 内筒をはんだ付けした時に使用したはんだ鏝は100Wのものです。これしか持ち合わせていなかったのでこの鏝を使いましたがやはりW数不足ですね。自分の感覚では200~300Wくらい必要と思います。シリンダーやコーン部分も100Wの鏝を使いましたがインレットをシリンダーに接合する段になりいよいよ無理だと感じ、大型の鏝を買いに走りました。なかなか大型のものが見つからなかったのですがある金物店で200Wの鏝があったのでこれを購入しました。

 はんだ付けで一番肝心なことは接合する部分の温度がはんだを溶かす温度になることです。接合する金属が大きく、厚くなれば鏝を当てた時に熱がどんどん逃げますので熱の供給源が大きくないと接合部分の温度が上がりません。またワット数が大きくても鏝を当ててから接合部の温度が上がるまでには一定の時間がかかりますので、温度が上がるまでは鏝を動かさないことが大事。はんだが溶けて接合部になじんできたら動かします。ゆっくり動かします。

 次に大事なことは接合部にゴミなどが付いてないこと。またフラックスなどを使う場合ははんだを付ける部分だけに塗ること。塗りすぎると亜鉛メッキなどは溶けて後の錆の原因になったりします。私は細い木片に少し塗り、それを接合部だけに付けるようにしています。

 また接合する金属同士が離れすぎていると難しい。0.1とか0.2ミリとかわずかに離れていて溶けたはんだが毛細管現象で隙間に入り込んでくれるような状態がいいみたいです。

 

インレットの製作

 インレットの断面は90×180ミリです。写真後方がこの寸法になっています。写真の手前の方の断面は正方形に作りました。インレットにはΦ150ミリのフレキ管を接続する予定ですので、もう1個の管を作り管の一方は円形、一方は正方形に作ってこのインレットに繋ぐことにしました。

シリンダーの製図

 シリンダーにはインレットを接続します。そのためにシリンダーに穴を開けなければなりませんが、その製図がさっぱりわかりません。円筒形のインレットを接続する場合の製図はネットで見かけたことがあります。断面が長方形の場合の製図は見た事ありません。インレットを水平にしてシリンダーに差し込むなら穴も長方形だから簡単ですが、斜めに差し込むとなると全く想像できません。

 そこで写真のような器具を作ってみました。シリンダーと同じ直径の円盤を1枚作り、これを4個の扇型にカットし、写真のように組み立て、ここにインレットを据え付けました。扇型の縁には10ミリ刻みの目盛りを書いたテープを張り付け、先をとがらせた物差しをこの目盛りに合わせて、上から2番目の扇板からインレットまでの距離を測定し記録しました。同様に下から2番目の扇板からの距離も測定し記録しました。

 上の方法で得られたデータから厚紙に図を書き切り抜けばインレット接合線の型紙が出来あがりです。インレットとシリンダーの接合部はこんな形でした。インレットをいくら眺めていてもこんな形は思い浮かばないですね。 シリンダーの外形線は単なる長方形です。型紙は不要です。両サイドに折り代を加え、内部にインレット接続線を型紙を使って書けば製図完了です。

 

コーン部分の製図

 扇型の製図をします。右の写真(小さくて見えないので同じ写真を拡大して下に掲載しました)で示したように計算し、半径996ミリ、中心角63.2度、側面長さ569ミリ、となるように製図します。計算は中学校で習う数学を使うと出来ます。いきなりトタン板に製図するのでなく紙に製図して型紙を作った方がいいですね。半径が996ミリなので角材などでコンパスを作る必要があります。上部はシリンダーに、下部は下部円筒にそれぞれ20ミリ程度差し込むのでその分足します。私はシリンダーとコーン部分の接合ははんだ付けだけでは強度が心配だったので、差し込み部分に計4個のリベットを打ち込みました。接ぎ部分に折り代が必要です。10ミリの折り代を付ける場合、片側に10ミリ、反対側に20ミリ、合計30ミリの折り代を付けます。20ミリではないので注意が必要です。扇型は取り都合が良くないので二つ割にした方がいいですね。ただしその場合は接ぎ線が2本になります。

シリンダーにインレットをビス止め

 シリンダーの接ぎ部分をはんだ付けし、車のホイールのような合板をはめ込み、インレットを差し込み、ビス止め位置を決めて穴開け、ビス止めします。次にホイール、内筒、らせん状の整流板?を入れ整流板のビス位置を印付けしました。少し端折りすぎましたね。ご勘弁を。合板でホイールのようなものを作ったのは、インレットのビス穴位置や整流板のビス穴位置を印付けする際に、シリンダーが歪まないようにするために円形の板をシリンダーに差し込む必要があります。しかし円型やドーナツ型の板を入れてしまうと、シリンダー内に手を入れることが出来ません。そこで作業用の穴を開けたのでホイール状になりました。このホイールはシリンダーの内径よりわずかに大きいドーナツ型の合板と接着し、シリンダーの上蓋として使います。

らせん状整流板?の作成

 製作過程が前後してしまいますがここで整流板の作成について記します。整流板はインレットからシリンダー内に入ってきた空気をらせん状に回転しながら下方向に行くようにするためのものだそうです。製図の仕方がさっぱり分からず、とりあえず薄い合板をシリンダーの内径と内筒の外径に合わせてドーナツ型に切り抜き、右図のように1か所カットし、これをシリンダー内に入れてみました。良くは解らなかったがシリンダーとの間に少し隙間が出来たので、シリンダーの内径より10ミリ大きくしてトタン板をカットしました。またビス止め用にトタン板からL型の金具を数枚作り整流板にはんだ付けし、シリンダーにビス止めしました。

 

シリンダーとコーンの接続

 コーンには20ミリの差し込み分を加えてカットしました。この部分には10ミリ程の間隔でV字形の切り込みを入れ、少し内側に折り曲げシリンダーに差し込み、4か所にリベット用の穴を開け、リベット止めをしてからはんだ付けしました。はんだ鏝は100Wですので時間はかかるし、綺麗には出来ませんでした。

整流板をビス止めしたところです。シリンダーとの間に若干の隙間がありますが、気にしないことにしました。

異形断面管

 インレットとシリンダーの接続部分の断面は長方形で反対側の断面は正方形に作りました。インレットに繋ぐフレキ管の断面は円形ですから、間に入れる異形断面の管が必要です。写真は手前が正方形、右奥が円形になるように板金加工しているところです。手前の角部分をL字鉄板に置き、右奥の方は左右に振りながら手で曲げていきます。こんなものを作ったことはないのですが、案ずるより産むがやすしと言いますが出来るものですね。これをインレットにビス2個とはんだ付けで止めました。

サイクロン完成

 いきなりですが完成写真です。柱は2×4材を二つ割にしたものです。ブロアは旋盤で作った接続管と後ろに見える板にボルト4本で固定(下の写真1枚目)しました。下部のゴミ受けはHCで購入した丸型ペール缶です。下から押し上げ蓋に密着させています。(下の真ん中の写真)蓋には戸の隙間などに使うもの(戸当たりテープと言うらしい)を貼り、更にパッチンを2個付けて気密性を上げています。このブロアは何故か排気口の断面が長方形でした。そこでフレキ管と接続できるように一方の断面を長方形、他方の断面を円形にした異形断面接続管を作りました。下の1枚目の写真で銀色に見える管がそれです。シリンダー、コーン部分などを青く塗装しましたが、塗装しない方が良かったと思います。

サイクロンと5台の機械を繋ぎました。

 写真はサイクロン回りです。右斜め上から吸気、ブロアから左の小さい箱に入り、下の大きな箱に入ります。小さい箱を作ったのは大きい箱とブロアの排気口が接近していてフレキ管では曲がりきれないのでこうしました。え!大きい箱を下げればいいではないかですって。そうすると大きい箱のドアを開けると手前の机にぶつかります。箱の中に布の袋をぶら下げる予定ですが袋は未だ出来ていません。箱の後方から立ちあがっているフレキ管は室外に繋がっています。この箱は以前マキタ410を使っていたときに集塵袋を入れておいた箱です。写真右中央の箱はインバーターです。

テーブルソーとの接続。

 テーブルソー(スティールシティー)が良く見えませんが集塵ポートが機械の下の方にあるのでこんな繋ぎ方になりました。窓の下を水平に走っているのがΦ150ミリスパイラルダクト管です。分岐管はY管と言うそうです。Y管の先で立ち上がってサイクロンに繋がっています。

帯鋸との接続

 帯鋸はスティールシティーの14インチバンドソーです。集塵ポートがメインダクトより上にあります。ブラスゲートは以前にシナベニアとトタン板で手作りしたものです。

自動カンナと手押しカンナへの配管

 写真の左側が自動カンナへの配管です自動カンナは高い位置にあるのでブラスゲートの先で上に立ちあがっていきます。右側の配管は手押しカンナに繋いでます。Y管の径はΦ150ミリでカンナに繋がっているフレキ管はΦ75ミリですので径を絞るためにレデューサーを手作りしました。

旋盤への配管

 旋盤は窓際でなく工房の中の方にあるので、頭上で配管しました。このレデューサーはコーンを直接スパイラルダクト管にはんだ付けしました。他のレデューサーはコーンに短い管を付けこれをY管に差し込みテープで止めています。

インバーター

 古い型なので大きくて重いです。周波数はディジタル表示でなく針の振れを読むようになっています。インバーターには下から3本の線が繋がっています。右端の線はモーターに繋がっています。真ん中の線は電源線です。単相200Vを入力しています。端子は3個ありますが繋ぐのはRとSです。テックさんに教えてもらいました。電源線は右に見える赤黒のボタンの動力用開閉器に繋がっています。インバーターの左端の線は始動信号用の線です。始動信号と言っても2つの端子をショートさせれば始動、切れば停止となりますのでこの2つの端子に繋いだ線を機械のそばに取りつけたスイッチに繋げばいいのです。私は5台の機械をサイクロンに繋いでいますがスイッチは3個取り付けています。動力開閉器はインバーターへの電源のON、OFFに使うものでモーターの始動、停止には使いません。

試運転

 配管を終わり試運転をしてみました。吸い込みは期待していた程は強力にはなりませんでした。数値では言えませんが、吸い込み口にてをかざした時の感じです。しかし自動カンナを使ってみると以前の集塵装置に比べ木屑の飛び散りがだいぶ減りました。1つ問題が起きました。それはインバーターの電源を入れると、冷却ファンが回りだし、これが結構音が高いです。ちょっと気になります。

 

製作費用

 機材、材料など:29230円

 道具など:9850円 (200V漏電ブレーカー3550円を含む)

 合計:39080円

 

自動カンナの集塵ポート付近の改善
 左の写真は現在の自動カンナの集塵ポートと配管状態です。サイクロンと配管などを改善したのですが、集塵ポートとそれに繋がるフレキ管は以前と同じです。フレキ管の口径は75ミリです。これでも以前よりは集塵率はアップしましたが完璧ではありません。より良くするためにフレキ管を100ミリのものに変えることとしました。そのためにポートやブラスゲートなども作り直す必要があります。

 

ポートのサイズアップ
 排水管用の塩ビエルボは接続口Φ104ミリのものを購入。これとカンナの木屑出口に取り付けた絞り部分を繋ぐ管(異形断面)を先ず作りました。円形断面はΦ110ミリ程度、断面長方形側は面積が同じくらいになるように65×132としました。その過程を以下に掲載。

 

異形断面管の作成

 先ず型紙を作ります(上1枚目写真)。円形と長方形を同じ面積にすると、長方形の方が周長が長くなりますので写真のような型紙になります。2枚目の写真は重ね部分の折り代を折る工程です。その前に長方形側の角に折り目を付けました。円形側は円筒の上で丸みを付けます。3枚目の写真は重ね部分のはんだ付けが終わったところです。

 

その他パーツの作成。

 上1枚目の写真にその他のパーツ4点が写ってます。左からコーン、ブラスゲート、円筒形接続管、(フレキ管は既製品)もう1個の円筒形接続管。3枚目の写真はブラスゲートの接着工程です。クランプを外したら、その左にある2個のパーツを上下に接着します。コーン、円筒それぞれつば状に折った部分がありますが、つばが収まるように押さえ板には段欠きがしてあります。

ブラスゲートの接着

 上1枚目の写真はブラスゲート接着中ですが、左のコーン部分にはんだ付けした管が見えます。当初はコーン部分を直接Y管にはんだ付けする予定でしたが、それでは後々色々困ることがあるような気がして急きょこの管を付けたし、この部分にY管を差し込みテープ止めすることに変更しました。2枚目の写真は可動シャッター部分にストッパーを接着しています。3枚目はブラスゲート完成写真です。

接続完了。今までの75ミリ管に対し今度の100ミリ管は断面積で1.8倍程度になります。広めの板で試験削りをしたところ、木屑の吸い込みは完璧とは言えないが、吸い残しが非常に少なくなり、まあまあの結果になったと思っています。

戸棚作成